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 暴力に対する包括的な対策
    CMV:Comprehensive Measures for the Violence

 CMVは、CVPPP(Comprehensive Violence Prevention and Protection Programme 包括的暴力防止プログラム)と少林寺拳法の技術・理念を参考にしています。

 暴力対策教育として、暴力が発生する以前に興奮を沈める技術、暴力が発生した際の身体介入、そして事後に当事者双方へのケア等、包括的な対策・リスクマネジメントが必要です。私たちはこれを「暴力に対する包括的な対策」として開発・検討しています。

 

 

1. 暴力行為の現状
1-1.業務中におこる暴力

  近年、暴力的事案に関する多くの報道を眼にします。暴力は学校や公共機関・公共施設でも教職員に対しても発生しており、このような業務中の暴力は報告の5倍は存在するとも見られています。(Lion et al, 1981) しかし長く暴力への対応は積極的に論じられることはありませんでした。
【参考例】

1-2.さまざまな暴力
  暴力は身体的暴力だけではありません。他にも言語的暴力や性的暴力があります。言語的な暴力は身体的暴力に先行するためリスクマネジメントを行う上でも大切な段階です。

1-3.暴力が発生した際の組織的損失
  暴力後の職員の心境には、恐怖・怒り・悔しさ・相手に対する嫌悪・自己嫌悪・自信喪失などがあげられます。(大迫,2004) 優秀なスタッフほどショックが大きく、長期休暇を招くこともあります。最悪の場合は退職の原因ともなり、人材的にも財政的にも組織にとって大きな損失となります。


1-4.暴力が発生した際の組織的対応
  組織的なサポートがある職場では暴力の発生件数が少なく、また職員が退職まで至りにくい傾向があります。上司や同僚からの非難や精神論による対処は解決にはなりません。まず暴力が発生しないリスクマネジメントを実施し、発生した場合には利用者・職員双方に対するサポートが必要になります。


2. 暴力についての研究
2-1.暴力の定義
  暴力の定義は広範ですが、主観だけに基いてしまってはこの問題に取り組むことはできません。英国保健省Department of Health は「業務に関わる状況において、スタッフへの虐待・脅迫・暴行というあらゆる危機をさし、安全・安寧・健康に対する、暗示的あるいは明示的な挑戦を含む」と定義しています。この定義に従い、もし業務上思い当たる節があるとすれば、早急に改善が必要です。

2-2.CMVは援助・福祉の一環です
  暴力行為は加害者と被害者を生みます。CMVは暴力行為の発生をまず抑え、職員を被害者にしないことと同時に利用者を加害者にしないためのプログラムです。また被害者が過剰防衛による加害者になることを防ぐプログラムでもあります。暴力行為の抑止は援助であり福祉の一環と捉えられています。

2-3.法的側面1「緊急避難」
  CMVは、警備員もしくは警察に連絡する余裕のない緊迫した状況下にあるとき、自己や他者の権利や利益(生命・身体)を防衛するためにやむを得ず行う行為であり緊急避難的な行為です。加害者を作らない、職員も第三者も怪我をさせないための対策であり、撃退・拘束を目的としていません。

刑法第36条(正当防衛)│急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
刑法第37条(緊急避難)│自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

2-4.法的側面2「安全配慮義責任」
  組織には管理責任・安全配慮義務責任(民法415条・労働契約法5条)を負っており、職員と利用者の安全を確保する責任があります。この責任の内に安全講習があり、安全に必要な教育を怠ったとしてある病院は敗訴しています。大阪地裁平16・4・12・判例時報1867号81頁 暴力に対しても環境整備を怠り、教育を怠れば安全配慮義務違反となる可能性があります。

労働契約法 第5条 (労働者の安全への配慮) │使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
第415条 (債務不履行による損害賠償)│債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。


3. これまでの対応
3-1.新規就労者とベテランの耐性と意識差

  経験が浅い新人はコミュニケーション能力や判断能力が未熟なため暴力に合いやすい傾向があります。暴力に対する教育を受けていない職員が対象になりやすいとする報告もあります。(Mason & Chandley 1999) 適切な対処法を知らないために自信をもった対処ができず起こってしまうこともあるのです。

3-2.これまでの現場の対応
  「お客様」「利用者様」第一で現場の職員が暴力を「我慢」した結果、暴力が受容されているともいえる状況が続いてきました。暴力的事案が発生した場合に報告を抵抗なく行える環境が整っておらず、小さな暴力は報告されないこともありました。

3-3.これまでの組織の対応
  これまで暴力に対する議論にはタブー視ともいえる状況がありましたが、リスクマネジメントの代表例であるヒヤリ・ハットに見られるように小さな暴力も放置してはいけません。
  暴力事案対策への取り組み・報告経路・教育システムから職員への休暇所得など、組織的な体制構築が必要です。事態の把握から公的(法的)対処を明確に示すことは職員と同時に組織を守ることでもあります。


4.暴力に対して、どのように対応すべきか
4-1.暴力に対するリスクマネジメント
  暴力に対して職員が「我慢」することは適切な対応ではありません。また被害者が加害者に「謝罪する」も適切な対応ではありません。これらは暴力の再発を招き、職場環境や社会秩序を悪化させる恐れがあります。

4-2. 組織的な対策
  現場の職員だけではなく、組織的な対応が必要です。緊急時における方針を明示し、現場職員に周知・教育されている必要があります。
  負傷者が出た場合は必ず診断書を作成し、器物破損があった場合には写真撮影するなど暴力に対して毅然とした対応をとることが職員に対しても対外的にも、そして組織的にも大切です。

4-3. 暴力への身体介入について
  暴力には徴候があります。暴力の誘発因子・攻撃性の生理的兆候等への気付きを高め、リスク軽減を図っていくことが大切です。暴力が発生してからの身体介入はあくまで最終であり、主要な対応ではありません。

4-4. CMVの技術面の性質
  就業上の教育として行われる身体技法に求められることは、短時間で学べることです。これまでの武道のように習得に何年も要する技術体系は不向きです。業態に沿ったより可能性の高い事案への集中的な研修と、明確なゴール地点を設定することで短期化することは可能です。
  対して避けるべき内容は、「あらゆる事態への対処法」や「達人の養成」です。また反撃を容認することもありません。
  有効性は複数人対応によるチームワークで確保します。CMVの身体技法は複数人による運用を基本としています。

 CMVは、CVPPP(精神病棟で行われている包括的な暴力対策)と少林寺拳法の理念・技術を参考にしています。詳しくは別のページにて記載しています。


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